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所得税の源泉徴収制度について

  1. 源泉徴収制度とは

     所得税は、所得者自身が、その年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」が建前とされていますが、これと併せて特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が適用されてます。

     この源泉徴収制度は、@給与や利子、配当、税理士報酬などを支払う者が、それを支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、支払者からその所得税額を差し引いて国に納付するというものです。

     この源泉徴収制度により徴収された所得税の額は、源泉分離課税とされる利子所得などを除き、例えば、報酬・料金等に対する源泉徴収額については確定申告により、また、給与に対する源泉徴収税額については、通常は年末調整という手続きを通じて清算される仕組みになっています。

     この源泉徴収制度は、我が国においては、利子所得については明治32年から、給与所得については昭和15年から採用されているなど長い歴史を有しており、外国においても多くの国で採用されています。

  2. 源泉徴収義務者とは

     源泉徴収制度においては、所得税を源泉徴収して国に納付する義務のある者を「源泉徴収義務者」といいます。源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、それが会社や協同組合である場合はもちろん、学校、官公庁であっても、また、個人や人格のない社団法人・財団法人であっても、すべて源泉徴収義務者となります(所法 6)。

     ただし、常時2人以下の家事使用人のみに対して給与の支払いをする個人が支払う給与や退職金手当、弁護士報酬・料金等については、所得税の源泉徴収を要しないこととされています(所法 184,200,204A二)。

  3. 源泉所得の納税地は

     特別な場合を除き、源泉徴収義務者が源泉徴収した所得税は、その納税地の所轄税務署に納付することになります。この場合の納税地は、次の2に揚げる所得に対するものを除き、源泉徴収の対象とされている所得の支払事務を取り扱う事務所や事業所等のその支払の日における所在地とされています(所法 17)。

     したがって、例えば、本店の使用人等に対するきゅうよの支払事務はその本店で取り扱い、支店の使用人等に対する給与の支払事務はその支店で取り扱っているような場合には、その支払事務を取り扱っている本店や支店の所在地が、それぞれの支払う給与に対する源泉所得税の納税地であり、その納税地の所轄税務署に源泉所得を納付することになります。

  4. 源泉徴収の対象となる所得の範囲は
     
     源泉徴収の対象となる所得の範囲は、その所得の支払を受ける者の区分に応じて次の表のとおりとなっています。
支払を受ける者
源泉徴収の対象とされている所得の種類と範囲

居住者

(国内に住所を有する個人又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。)
(所法2@三)

  1. 利子等
@公社債及び預貯金の利子、A合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配、B勤労者財産形成貯蓄保険契約等に基づく差益(所法23、181、措法3の3@B、4の4@)
  1. 配当金
@法人から受ける利益の配当(いわゆる中間配当及び利息の配当を含みます。)剰余金の配分、A基金利息、B投資信託の収益分配(利子等に該当するものを除きます。)など(所法2B、24、25、181、措法8の3@B、9の2A)
  1. 給与等
棒給、給料、賃金、歳費、賞与その他これらの性質を有するもの(所法28、183、190)
  1. 退職手当等
@退職手当、一時恩給その他これらの性質を有するもの、A社会保険制度等に基づく一時金など(所法30、31、199、措法29の6)
  1. 公的年金等
@国民年金法、厚生年金法等に基づく年金、A恩給(一時恩給を除きます。)及び過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、B適格退職年金など(所法35B、203の2)
  1. 報酬・料金等

次に掲げる報酬・料金、契約金、賞金(所法204、措法41の19)

  1. 原稿料、デザイン料、公演料、放送謝金、工業所有権の使用料、技芸・スポーツ・知識等の教授・指導料など
  2. 弁護士、公認会計士、税理士の報酬・料金
  3. 社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬
  4. 外交員、集金人、電力量計の検針人、プロ野球の選手、プロサッカーの選手等の報酬・料金
  5. 芸能、ラジオ放送及びテレビジョン放送の出演、演出等の報酬・料金並びに芸能人の役務提供事業を行う者が支払を受けるその役務の提供に関する報酬・料金
  6. バー・キャバレー等のホステス、バンケットホステス・コンパニオン等の報酬・料金
  7. 使用人を解雇するための支度金等の契約金
  8. 事業の広告宣伝のための賞金及び馬主が受ける競馬の賞金
  1. 生命保険契約・損害保険契約等に基づく年金(所法207)
  1. 定期積金の給付補てん金等(所法174三〜八、209の2)
  1. 特定の匿名組合契約に基づく利益の分配(所法210)
  1. 上場株式の譲渡による所得(旧措法37の11)
  1. 懸賞金付預貯金等の懸賞金等(措法41の9)
  1. 特定の割引債の償還差益(措法41の12)

内国法人

(国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいいます。)

(所法2@六)

  1. 利子等(居住者の場合の@及びAに同じ)(所法174-、212B、措法3の3AB)
  1. 配当金(居住者の場合の範囲に同じ)(所法174二、212B、措法8の3AB、、9の2@A)
  1. 定期積金の給付補てん金等(所法174三〜八、212B)
  1. 特定の匿名組合契約等に基づく利益の分配(所法174九、212B)
  1. 芸能人の役務提供事業を行う法人が支払を受けるその役務の提供に関する報酬・料金(所法174十、212B)
  1. 馬主が受ける競馬の賞金(所法174十、212B)
  1. 懸賞金付預貯金等の懸賞金等(措法41の9)
  1. 特定の割引債の償還差益(措法41の12)

非居住者

(居住者以外の個人をいいます。)

(所法2@五)

及び

外国法人

(内国法人以外の法人をいいます。)

(所法2@七)

  1. 次に掲げる対価等で国内にその源泉があるもの(所法161一の二〜十二、212@A、措法42@)

    1. 土地の譲渡による対価
    2. 人的役務の提供事業を行う者が受けるその役務提供の対価
    3. 不動産、船舶、航空機などの貸付けの対価及び地上権などの設定の対価
    4. 利子等
    5. 配当等
    6. 貸付金の利子
    7. 工業所有権、著作権等の使用料又は譲渡の対価
    8. 給与その他人的役務の提供に対する報酬、公的年金等、退職手当等(非居住者のみ)
    9. 事業の広告宣伝のための賞金
    10. 生命保険契約・損害保険契約に基づく年金
    11. 定期積金の給付補てん金等
    12. 特定の匿名組合契約等に基づく利益の配分
  1. 国内に恒久的施設を有する非居住者が行う上場株式等の譲渡による所得(旧措法37の11)
  1. 懸賞金付預貯金等の懸賞金等(措法41の9)
  1. 特定の割引債の償還差益(措法41の12)
(注)
  1. 住所とは、個人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判断します(所基通2-1)。

  2. 居住とは、生活の本拠ではないが現実に居住している場所をいいます。

  3. 居住者と非居住者との区分は、その人の国籍や在留資格(入国ビザ)には関係がなく、その人の住所や1年以上継続した居所が実際に国内にあるかどうかなどにより判定しますが、その場合には、それぞれ次のように取り扱われます。

    1. 国内に居住するこことなった人が、国内に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有するような場合には、その人は国内に住所を有する人と推定されます(所令14)。
    2. 国外に居住することとなった人が、国外に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有するような場合には、その人は国内に住所を有しない人と推定されます(所令15)。

  4. 内国法人及び外国法人には、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるいわゆる人格のない社団等も含まれます(所法4)。
  1. 源泉徴収をする時期は

     所得税の源泉徴収をする時期は、現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。したがって、これらの所得を支払う事が確定していても、現実に支払われなければ源泉徴収をする必要はありません。

    (注)源泉徴収を行う際の「支払」とは、現実に金銭を交付する行為のほか、元本に繰り入れ、又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為をいいます。(所基通181〜223共-1)

    ただし、次の場合には、それぞれ次により源泉徴収いたします。

    1. 配当等(投資信託又は特定目的信託の収益の配分を除きます。)についての支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がない場合・・・・・その1年を経過した日(所法181A)
    2. 法人が利益処分による経理をした賞与(損益経理をした役員賞与のうちに損金の額に算入されないものがあるときは、これを含みます。)について支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がない場合・・・・その一年を経過した日(所法183A)
    3. 割引債の償還差益・・・・その割引債の発行の際(措法41の12B)

     

  2. 源泉徴収をした所得税の納付

    1. 納付期限

       源泉徴収義務者が源泉徴収をした所得税は、源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日までに納付しなければならないことになっています。(所法181ほか)。ただし、非居住者又は外国法人に対し国外において国内源泉所得を支払った場合に源泉徴収をした所得税の納付期限は、その支払った月の翌月末日とされるなど(所法212A、措法6A、42@)、一定の場合には例外があります。
       
      なお、この納付期限の日が、日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。(国税通則法10A、同施行令2A)。この納付期限までに納付されない場合には、源泉徴収義務者は延滞税や不納付加算税などを負担しなければならないことになります。(国税通則法60、67、68)。

    2. 納付の特例
       給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者については、納付手続きを簡易にするために、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税を次のように年2回にまとめて納付する、納期の特例の制度が設けられています。(所法216)。
源泉所得税の区分 納付期限
1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税額 7月10日
7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税額 翌年1月10日(納付期限の特例の届出書を提出している者で一定の要件を満たす者については翌年1月20日)

 この納期の特例の適用を受けるためには、所轄税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認を受けることが必要です(所法217)。この承認申請書を提出した日の属する月の翌月末日までに税務署長から承認又は却下の通知がない場合には、その申請月の翌月末日において承認があったものとされ、申請月の翌々月の納付分からこの特例が適用されます(所法216、217D)。

 なお、この納期の特例の適用を受けるための申請書は、いつでも提出する事ができます。

 また、納期の特例の承認を受けている者が7月から12月までの間に源泉徴収した所得税の納付期限を翌年1月20日をする納期限の特例の適用を受けるためには、その年12月20日までに「納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」を所轄税務署に提出する事が必要です(措法41の6@)

 この場合、届出書を提出した年及びその後の各年において、次のいずれかに該当する事実があるときは、この納付期限の特例の適用はなく、その年7月から12月までの間に源泉徴収した所得税の納付期限は、 翌年1月10日となります(措法41の6A)。

  1. その年12月31日において源泉所得税の滞納があること
  2. その年7月から12月までの間に源泉徴収した所得税を翌年1月20日までに納付しなかったこと。

(注)

    1. 納期の特例の対象は、次に掲げる源泉徴収税に限られます(所法216)。
      1. 給与及び退職手当(非居住者に支払ったこれらのものを含みます。)について源泉徴収した所得税
      2. 弁護士(外国法事務弁護士を含みます。)司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士等に支払った所得税法第204条第1項第2号に掲げる報酬・料金について源泉徴収をした所得税
    2. 申請書及び届出書の用紙は、税務署に用意してあります。
  1. 納付の手続き

     源泉徴収をした所得税は、「所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて銀行(日本銀行の本店、歳入代理店等)や郵便局などに納付します(所法220、措令26の10@、旧措令25の10)。

     納付書の種類とその使用区分は、次の表のとおりです。
所得税徴収高計算書(納付書)の種類
略号
左の納付書を使用する所得の種類
給与所得、退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)(一般用及び納期特例用)
給与所得、退職所得及び弁護士、税理士等の報酬・料金
報酬・料金等の所得税徴収高計算書(納付書)
弁護士、税理士等の報酬・料金以外の報酬・料金等、生命・損害保険契約に基づく年金及び公的年金等
利子等の所得税徴収高計算書(納付書)

利子所得、投資信託又は特定目的信託の収益の分配及び匿名組合契約等に基づく利益の分配

配当等の所得税徴収高計算書(納付書)
配当所得(投資信託又は特定目的信託の収益の分配を除きます。)
非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高書(納付書)
非居住者及び外国法人に支払う各種の所得(割引債の償還差益及び上場株式等の譲渡による所得を除きます。)
償還差益の所得税徴収高計算書(納付書)
割引債の償還差益
定期積金の給付補てん金等の所得税徴収高計算書(納付書)
定期積金の給付補てん金等及び懸賞金付預貯金等の懸賞金
上場株式等の譲渡利益金額の所得税徴収高計算書(納付書)
上場株式等の譲渡による所得
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最終更新日: 2005年12月6日